【生成AI活用研修】岡山県内の学校栄養士協議会「食に関する指導と校務効率化のための生成AI活用」研修会実施レポート

生成AIを使う目的は、効率化そのものではありません。
文章づくりや資料整理をAIに任せることで生まれた時間を、子どもと向き合う時間、保護者を支える時間、そして献立を最終確認する専門職としての時間に使う——それが、この研修でお伝えしていることです。
2026年7月、岡山県美作地区学校栄養士協議会様の研修会にて、栄養教諭・学校栄養職員のみなさまを対象に「食に関する指導と校務効率化のための生成AI活用 ~日々の『時間のかかる作業』をAIと分担する~」をテーマにお話ししました。
開催概要
| 研修名 | 美作地区学校栄養士協議会研修会 |
|---|---|
| 講演テーマ | 食に関する指導と校務効率化のための生成AI活用 ~日々の「時間のかかる作業」をAIと分担する~ |
| 主催 | 岡山県美作地区学校栄養士協議会 様 |
| 実施日 | 2026年7月24日 |
| 開催形式 | オンライン(Zoom) |
| 対象 | 栄養教諭・学校栄養職員 |
| 参加人数 | 約30名 |
| 講師 | 株式会社ビストロパパ 代表取締役/パパ料理研究家 滝村雅晴 |
なぜ今、学校給食の現場に生成AIなのか
栄養教諭・学校栄養職員のみなさまの業務は、献立作成、栄養価計算、アレルギー対応、衛生管理、給食だよりの発行、食育の授業づくり、保護者対応と、驚くほど多岐にわたります。しかも多くの学校で「一人職」です。
そのなかで、実は「文章を考える時間」「資料をつくる時間」「情報を整理する時間」が想像以上の割合を占めています。給食だよりの書き出しに30分悩む。指導案の構成を白紙から考える。会議の議事録を起こす。どれも大切な仕事ですが、専門職でなくてもできる部分が含まれています。
生成AIは、この部分を肩代わりできます。そして生まれた時間を、本来いちばん大切にしたい時間に振り向ける。

研修冒頭のアンケートで判明した、参加者の不安トップ3研修でお伝えした主な内容
講義だけで終わらせず、実際の画面をお見せしながら「明日から試せる形」でお伝えしました。
1・分からない画面は、AIに聞く
研修の最初にお伝えしたのは、機能の説明ではなく「聞き方」でした。
パソコンやWebサービスの操作画面が分からないとき、その画面をスクリーンショットで撮り、そのままChatGPTに貼り付けて質問する。「この画面は何ですか」「次に何を押せばいいですか」「この英語の意味を教えてください」——文章で説明するより、画像を見せたほうが正確な答えが返ってきます。ポスターや案内文を撮影して「この画像の文字をすべて文字起こししてください」と依頼することもできます。この一つの動作を知るだけで、生成AIへの心理的なハードルは大きく下がります。

迷ったら、まずは★印の4つ(ChatGPT・Claude・Canva・Gemini Notebook)から使ってみる。それだけで、日常業務の9割はカバーできます。
2・給食だより・食育だよりの文章作成
ポイントは、対象・文字数・口調・地域・目的を具体的に指定することです。研修では、実際に次のような指示文をお見せしました。
あなたは学校栄養士です。11月の給食だよりの「旬の食材コーナー」を、保護者向け、300字、やわらかい口調で書いてください。特に岡山県美作市の地元食材を活用する文章にしてください。

3・献立作成への活用
既存の給食献立表のPDFをそのまま読み込ませ、文字起こしを行ったうえで、これまでの献立の形式や傾向を参考にした翌月の献立案を出させました。
指示に含めた条件は、月・曜日・日付入り・行事(運動会)を意識すること・食べやすさ・岡山県産食材の活用・旬の食材・既存献立の形式踏襲。AIは主食、主菜、副菜、汁物、行事食、応援献立を含む案を作成しました。
もちろん、栄養価・調理設備・予算・食材調達・アレルギー・安全性は、栄養士が必ず確認する前提です。AIが出すのは、あくまで叩き台です。
4・食育指導案づくり
小学3年生向け「朝ごはんの大切さ」をテーマにした45分の指導案を、その場で作成しました。
コツは、いきなり完成案を求めないことです。まず「方向性を10案出してください」と依頼し、そのなかから「家族とつくる朝ごはん型」を選択。そこから全体構成 → 時間配分 → 教師の発問 → 子どもの活動 → ワークシート → 読み上げ原稿、と順に深掘りしていきます。
5・Googleフォームの自動作成
小学生の保護者向けに「夏休みの食生活アンケート」を作成する実演を行いました。目的・説明文・質問項目・選択肢・お礼文をAIに考えてもらったうえで、Google Apps Script用のコードまで生成させ、貼り付けて実行するとフォームが自動で出来上がります。
これまで1〜2時間かかっていた作業が、短時間で形になる可能性があります。
6・献立表ポスター・食育ポスターの作成
作成した献立案をもとに「A3サイズの献立表ポスターにしてください」と依頼すると、イラスト入りの献立表が生成できます。今回の研修では、実際にスイカの写真から食育ポスターを作るデモをその場で行いました。
スイカがどんな栄養を持っているか、夏に食べる良さ、おすすめの食べ方、子ども向けの吹き出し、暖色系のあたたかい雰囲気——こうした条件を1つの指示にまとめて伝えるだけで、印刷してそのまま掲示できるレベルのポスターが数十秒で出来上がります。

研修中にライブで作成した、スイカの食育ポスター完成例7・Gemini Notebook(旧NotebookLM)を使った教材づくり
農林水産省などの食育資料を読み込ませ、その資料に基づいたスライド、音声解説、動画解説、クイズ、インフォグラフィック、研修構成台本を作成しました。(NotebookLMは2026年7月にGemini Notebookへ名称変更されています)
大量の資料をまとめて読み込ませ、その資料の中身に基づいて答えさせられる点が、ほかのツールとの大きな違いです。
生成AI活用の「三種の神器」
① デュアルモニター
一方の画面に資料やZoomを表示し、もう一方でAIを操作する。資料を見ながら相談・作成ができるため、作業効率が大きく変わります。
② 音声入力
長い指示をキーボードで打たず、話して伝える。文章作成、企画、メール、アイデア出しを、思いついた速さのまま依頼できます。
③ ボイスメモと文字起こし
会議や打ち合わせをスマートフォンで録音し、文字起こしをAIに貼る。「議事録にしてください」「決定事項と宿題をまとめてください」で完成します。
個人情報の取り扱い ― 学校現場で必ず押さえる線引き
学校現場で生成AIを導入するとき、最大の不安は個人情報です。研修では、このパートも実施します。

学校現場で生成AIを使う3つの約束と、入力してよい情報の信号機(赤・黄・青)入力を避ける情報
- 児童・生徒の氏名/住所/電話番号/顔写真
- 個人を特定できる情報
- 個人のアレルギー情報
- 未公開の内部資料
- パスワード・アカウント情報
大切なのは「使わない」ではなく「言い換えて使う」ことです。

「入れてはいけない情報」を安全に言い換える具体例| 避けたい例 | 「3年2組の◯◯さんは卵アレルギーです。保護者への連絡文を書いてください」 |
|---|---|
| 安全な例 | 「小学校3年生の保護者向けに、卵アレルギー除去食に関する一般的な連絡文のひな形を作ってください」 |
必要な氏名や学級名は、AIが出力した文章を確認したあとに、自分で追加します。これだけで、実務の利便性を落とさずに安全性を確保できます。
あわせて、ChatGPTの設定画面「データコントロール」から、モデル改善へのデータ利用をオフにする方法もお伝えしました。ただし、設定をオフにしたから何を入力してもよい、という意味ではありません。入力前に内容を確認する習慣そのものが、いちばんの安全対策です。
AIは優秀ですが、最終確認は専門職の仕事です
生成AIは、とても優秀な新人職員のような存在です。多くの作業を短時間でこなす一方で、事実と異なる情報や、不自然な文章を出すこともあります。

研修でお伝えした、AIと専門職の仕事の分担とくに次の内容は、専門職による確認が欠かせません。
- 栄養価/アレルギー対応/食品衛生
- 法令・制度/献立内容
- 学校名・地名・日付・人名
- AIが生成した画像内の文字
AIの回答をそのまま使うのではなく、必ず人が確認して完成させる。この工程を省かないことが、生成AIを現場に定着させる条件です。
AIが間違える理由は、実はいくつかに分けられます。指示が曖昧で意図が正しく伝わっていない、使い慣れていないために聞き方そのものが手探りになっている、そして会話を長く続けすぎて過去のやり取りが正確に反映されなくなっている——このどれかであることがほとんどです。
逆に言えば、これは「AIの限界」ではなく「使い方の技術」です。対象・条件・目的を具体的に伝える、話題が変わったら新しいチャットを開く、出てきた答えは必ず確認する——この一連の型を身につけることが、AIを安心して現場に取り入れる一番の近道です。研修では、この「間違えにくい聞き方」そのものを、実演を通してお伝えしました。
研修を終えて ― 主催者様より
研修後、主催の美作地区学校栄養士協議会様より、書面にてご丁寧なお礼状を頂戴しました。
「生成AIとの仕事の切り分け方や、活用される際に意識しておられるポイントなどのお話は、今後私たちがAIを活用していくうえで、大変心強い指針となりました」
「デモンストレーションを多く取り入れていただいたおかげで、触れたことのない者にもわかりやすく、現場での具体的な実践方法がイメージできる内容として、大変好評を博しております」
そして、今後は各自が生成AIを活用した業務改善に努め、子どもたちと向き合う時間をより多く確保していきたいと考えている、と結んでいただきました。
この研修で最も伝えたかったのは、高度な使い方ではなく「これなら自分にもできそう」という感覚と、生まれた時間を子どもたちに使うという目的でした。その両方が届いていたことが、なによりの成果です。
講師より
私は料理と食育を専門としてきた人間です。プログラムを書くエンジニアではありませんが、日々の仕事でデジタルツールや生成AIを使いこなしてきた実践者として、この研修に立っています。だからこそ、この研修では「AIの機能」ではなく「給食の現場の、どの仕事をAIに渡せるか」からお話しします。
献立の妥当性、アレルギー対応の重み、保護者への言葉づかい——それらが分かっていなければ、どこまでAIに任せてよいかの線は引けません。生成AI研修でありながら、話の中心にあるのはいつも食卓です。
研修の最後に、参加されたみなさまへお願いしたことがあります。日々の業務のなかから「時間がかかっている作業」「繰り返している作業」「文章を考えるのが大変な作業」をひとつだけ選んで、生成AIに相談してみてください、と。
一度にすべてを変える必要はありません。ひとつの作業が10分短くなったら、その10分は、子どもと向き合う時間になります。

よくあるご質問
Q. 学校給食の献立を生成AIに作らせても大丈夫ですか?
叩き台としては非常に有効です。ただし栄養価、調理設備、予算、食材調達、アレルギー対応、安全性については、栄養教諭・学校栄養職員が必ず確認する前提でご活用ください。研修では「AIに任せる範囲」と「専門職が判断する範囲」の線引きを具体的にお伝えしています。
Q. 児童・生徒の氏名やアレルギー情報を入力してもよいですか?
入力しないことを推奨しています。個人が特定できる情報は入れず、「小学3年生の保護者向けに」といった一般的な条件に言い換えて依頼し、氏名や学級名は出力後にご自身で追加してください。研修では、この言い換えの具体例をお渡ししています。
Q. パソコンが得意でない職員でもついていけますか?
はい。研修は「分からない画面をスクリーンショットで撮ってAIに聞く」という、もっとも簡単な操作から始めます。専門用語を並べず、実際の画面をお見せしながら進めますので、これまで生成AIを使ったことのない方を想定した構成になっています。
Q. オンラインでも実施できますか。人数や時間はどれくらいですか?
オンライン・対面のいずれでも実施しています。今回は約30名の栄養教諭・学校栄養職員のみなさまを対象に、オンラインで実施しました。時間や内容は、ご依頼先の状況にあわせて構成しますので、まずはご相談ください。

